走るという、小さな対話
この写真は、走っている途中に撮った一枚です。
走っているとき、私はたいてい頭の中でいろいろなことを考えています。何かを整理しようとしているわけでもなく、考えようと思っているわけでもないのに、言葉やイメージが自然と浮かんできます。
その日も同じように走っていましたが、視界の端にふと入ってきた景色がきれいで、気づいたら足を止めてカメラを構えていました。
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普段は夜に走ることが多く、朝に走るのは少し久しぶりでした。朝の光や空気は、夜とは違ってどこか落ち着かず、最初は少し距離を感じていました。
走りに出る前も、正直なところ、特別な理由はないまま、少しだけ心が重たい状態でした。
走り始めてからもしばらくは、頭の中は静かにはなりません。
仕事のことや、うまくいかなかった出来事、形にまだならない不安が、走るリズムとは関係なく浮かんでは消えていきます。
それでも、呼吸が整い、足の運びが一定になってくると、少しずつ体の感覚に意識が戻ってきました。足裏が地面に触れる感覚や、風が頬をかすめる感じが、思考の隙間に入り込んできます。
考えることが完全になくなるわけではありません。ただ、考えと体の距離が少し近づくような感覚があります。
頭の中で言葉が動きながらも、体は淡々と前に進んでいく。そのバランスが、走っている時間にはあります。速さや距離はあまり気にしていません。
その日、そのときの呼吸と体の状態に合わせて、ただ走っています。
走り終えて立ち止まり、呼吸が落ち着いてくると、頭の中も少し静かになります。
悩みが消えたわけでも、何かが解決したわけでもありません。それでも、体を通して自分の感覚に触れ直したような気がしました。
走ることは答えを出すための時間ではなく、今の自分がどんな状態なのかを確かめるための時間なのだと思います。
この日は、そんなことを考えながら走っていました。
もし今、頭の中が少し騒がしいと感じているなら、短い時間でも構いませんので、外に出て体を動かしてみてください。
考えを止めようとしなくても、体のほうが先に、静かな場所へ連れていってくれるかもしれません。