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変な絵は、読む手を止めるほうが難しかった

2026年07月15日 70 views
変な絵は、読む手を止めるほうが難しかった

普段の私は、一冊の本を読み終えるまでに一〜二週間くらいかかります。毎日少しずつ読み進めて、その日の区切りで本を閉じる。それがいつもの読書スタイルです。

でも『変な絵』だけは違いました。

三日で読み終えました。

面白かったから、という一言では足りないくらいです。むしろ「今日はここまで」と本を閉じるほうが大変でした。続きを知りたくて、このまま朝まで読んでしまいたい。そんな気持ちになったのは本当に久しぶりです。

もちろん翌日は仕事があるし、睡眠も削りたくありません。だから読む時間を決めて、本を閉じるようにしていました。でも閉じたあとも、頭の中ではずっと物語が続いていました。一日目を読み終えた時点で、「もう最後まで読ませる気なんだな」と完全に作者の思うつぼでした。

最初に絵を見たときから、「この絵には何かがおかしい」ということだけは分かりました。でも、その「何か」がどこにあるのかは、いくら見ても分かりません。じっくり観察して自分で謎を解くこともできたのかもしれませんが、私はそこまで我慢できませんでした。「答えを知りたい」という気持ちのほうが勝ってしまって、そのままページをめくり続けました。

読み進めるうちに、一見まったく関係がなさそうだった絵や事件が少しずつつながっていきます。「あれ?」と思う瞬間が何度もありました。作者はすべてを説明するのではなく、読者が自分で気付けるような余白を残しています。その余白に自分の考えがぴたりとはまった瞬間は、本当に鳥肌が立ちました。

もちろん、自分で推理できたかと言われると、ほとんどできていません。「これは何か意味があるんじゃないか」と考えながら読んではいましたが、真相はほとんど当てられませんでした。説明を読んで初めて「そういうことだったのか」と驚くことばかりで、まだまだミステリーを読む力は足りないなと少し悔しくなりました。でも、その「やられた」という感覚も含めて、この本の面白さだったと思います。

実は以前、イラストに関わる仕事をしていたことがあります。仕事ではレイヤーを重ねながら絵を作ることも多く、「見えているものの下に別の情報がある」という考え方には馴染みがありました。だからこそ、この作品で一枚の絵に何層もの意味を重ね、それをだまし絵のように読者へ見せる構成がとても面白く感じました。ただ絵を描いているのではなく、その人の心理や過去、未来、そして事件の真相までも一枚の中へ隠してしまう。「ああ、こういう表現の仕方があるんだ」と、イラストという視点から見ても、とても興味深い作品でした。

読み終えてから特に印象に残ったのは、事件そのものよりも、人の心の描き方です。「自分より弱い存在を守りたい」という気持ちは、本来なら温かい感情のはずです。でも、その感情が行き過ぎると、守るためなら他人を傷つけてもいいという考えに変わってしまうことがある。その危うさが、この作品ではとても恐ろしく描かれていました。

犯人が過去に抱えていた孤独や虐待を知ると、「かわいそうだった」と簡単には言えません。それでも、「なぜそうなってしまったのか」が少しだけ理解できそうになる瞬間があります。その感覚が少し怖いと思いました。ここまで人物の心理を丁寧に描かれると、読む人の状態によっては犯人へ感情移入しすぎてしまうこともあるのではないでしょうか。人の心というものは、本当に複雑です。

そして、もう一つだけ。

私はこの本を第一章から読み始めてしまいました。読み終わってからページを戻して初めて、プロローグがあったことに気付いたんです。「え、最初に読むページがあったの?」と思わず一人で笑ってしまいました。もし最初にあのプロローグを読んでいたら、この物語の見え方は違っていたのでしょうか。そんなことまで考えてしまって、結局また最初から読み返したくなっています。二回目なら、一回目では気付かなかった違和感や伏線をもっと見つけられる気がします。

この本を読んでいて改めて感じたのは、絵は「見たまま」を描くものではないということです。その人が何を見ていたのか。何を隠したかったのか。何を伝えたかったのか。そういう目に見えないものまで映し出してしまうのが、絵という表現なのかもしれません。

そういえば、ずいぶん長い間ブログを書いていませんでした。読書感想を書くのも久しぶりです。もしかしたら、この本との出会いは「そろそろまた書いてみたら?」という小さなサインだったのかもしれません。せっかくこんなに夢中になれる一冊に出会えたので、この勢いのまま、また少しずつブログを書いていこうと思います。

まずは、この一冊から。

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