日本で一人暮らしをして気づいたこと
日本で一人暮らしを始めてから、「静かだな」と思うことが増えました。
電車の中も、カフェも、夜の住宅街も静かです。家へ帰れば、お湯が沸く音や、窓の外を走る車の音くらいしか聞こえません。
最初は少し物足りなく感じていました。でも、いつの間にかその静けさが好きになっていました。何も聞こえない時間があると、不思議と頭の中も静かになります。無理に考えようとしなくても、その日あったことや、これからやりたいことが、ゆっくり浮かんできます。
日本では、一人で過ごすこともごく普通です。一人でご飯を食べる人も、一人でカフェにいる人も、一人で映画を見たり、山へ登ったりする人もいます。誰も誰かを気にしていない。その空気がとても自然で、最初は少し驚きました。
もし同じことをベトナムでしていたら、もう少し周りの視線を感じていたかもしれません。
……とはいえ、実はベトナムにいた頃から、私はあまり人の目を気にするタイプではありませんでした。むしろ少し目立つくらいなら、それはそれで面白いと思っていたくらいです。
だから日本へ来て変わったのは、「一人で行動できるようになったこと」ではありません。
誰にも気づかれないことが当たり前になったことです。
街の中を歩いていても、電車に乗っていても、私はただ大勢の中の一人です。その感覚は少し不思議で、でも嫌いではありません。
一人暮らしになって、一番実感するのは風邪をひいた日です。
薬を買ってきてくれる人も、おかゆを作ってくれる人もいません。「大丈夫?」と部屋の向こうから声をかけてくれる人もいません。
もちろん、母や友達に連絡をすれば、きっとすごく心配してくれると思います。でも、その心配を聞くと、今度はこちらが申し訳なくなってしまいます。遠くにいるのに何もできない。それが分かっているからこそ、余計に心配をかけたくないと思ってしまいます。
だから、日本へ来てからは、前よりも自分の体を大事にするようになりました。
早めに寝る。ちゃんとご飯を食べる。運動もできるだけ続ける。
健康に特別気を遣っているというより、「自分のことは自分で守るしかない」と自然に思うようになっただけなのかもしれません。
朝起きて仕事へ行き、夜は家へ帰って簡単なご飯を作る。部屋を少し片付けて、本を読んだり、はっちゃんと遊んだりして、一日が終わります。
特別な出来事はほとんどありません。
でも、その何気ない毎日を繰り返しているうちに、生活は少しずつ形になっていくのだと思います。
日本へ来てから変わったのは、劇的な何かではありません。
静かな街で暮らし、静かな部屋へ帰り、静かな時間の中で、自分の生活を少しずつ作っていくこと。
そんな小さな変化の積み重ねが、いつの間にか今の私になっていました。